『写真家 六田知弘「宇宙のかけら―御所 GOSE」』  ― 町家に写し撮られた「御所」という「風景」 ―


写真展 『写真家 六田知弘「宇宙のかけら―御所 GOSE」』を御所会場にて観賞してきた。
御所会場は、六田知弘氏が生まれ育った地である御所市に残る「御所まち」の町家を展示スペースとしている。
江戸時代初期に形成されたという「御所まち」に残るその町家(赤塚邸)は、屋内を拝見するだけでも価値のある、大変趣のある歴史的な建造物である。建物それ自体が、観賞の対象物として耐えうるものである。


このように、すでに「意味」を持った建物に作品を展示する場合、その効果には2つのパターンがあると思う。
一つは―僕が知っているのはこちらの方が多いのだが―、展示会場との「違和感」を狙ったもの/内包したものである。
僕の少ない美術鑑賞体験に於いては、カオス*ラウンジの『キャラクラッシュ!』展(2014)がある。展示会場となったのは、築80年以上という木造の一軒家で、会期後は、取り壊される運命を背負った建物である。その一軒家の生活スペースであった空間に展示された作品たちは、その空間に対して「違和感」や「虚偽性」を帯びており、おそらくは意図的に「暴力性」「侵略性」「恐怖」といった感覚を感じさせるよう配置されたものであった。他には、村上隆による ベルサイユ宮殿での作品展も「違和感」を内包したものだろう。


もう一つのパターンとは、展示会場に存在する作品に「違和感」を感じない作品展である。
しかし、それはつまり、その会場の特異性や意味を必要としてないという事であり、ともすれば、その会場を選択する事自体に意味がない、つまらない選択になりうる。このパターンの作品展は、僕は不勉強な為か知らない。

御所会場において、古い町家を展示会場として選択した今回の作品展『写真家 六田知弘「宇宙のかけら―御所 GOSE」』はどうだろうか。
結論から言えば、二つめのパターン、「違和感」を感じさせない作品展だと感じた。そして、「違和感」を感じないにもかかわらず町家を会場に選択している事に強い意味も感じた。
展示会場たる町家の土間を上がり、屋内に入って気づくのは、どれが作品であるのか、どの部分が本来の町家の装飾であるのか、一瞥では判然としない事である。作品には、キャプションが貼られておらず、作品を隔てる白壁も当然存在しないので、例えばふすまに描かれたそれが、果たして作品なのか、本来のふすま絵なのかが瞬時にはわからない。しかし、よく見れば、その画から伝わるある種の”神々さ”によって作品だと判別できるようになってくる。
そう、御所会場に展示された作品は、神秘的なもの/刹那的なもの/神話的なものを切り取った”神々しい”ものが多かったように思う。
そんな”神々しい”作品を、町家という生活空間に混入させれば、「違和感」を感じてしまいそうなものであるが、それに「違和感」を感じさせないのが、この作品展の白眉ではないかと思う。おそらくは、作品の選出や、配置が意識的/無意識的に、「違和感」を感じさせないように意図されているのではないか。
これは、御所という地の風土、特色によるものが大きいと思う。
御所の地に於いて撮影された作品が、御所の地に於いて展示されているからこそ、可能になった事ではないだろうか。
そして、それは、この作品展そのものが「御所」という地の特色を写し撮っている事に他ならない。


御所の風土の特徴とは、いくつもの異なった面が同居し、融和している事だと思う。
山々や森などの神秘的な自然。神社や仏閣などの歴史や謂われのある場所。そんな畏怖や神秘的な空気を感じとれる場所である”神々しい”地としての「御所」。
古くからの「御所まち」や町家を有し、連綿と続いてきた人びとの生活や暮らしの地としての「御所」。
全国水平社設立の中心人物である西光万吉の生誕の地であり、いわゆる同和地区や部落解放運動が当たり前に存在し、差別や人権問題と向き合ってきた地としての「御所」。
そんな、各々が「違和感」を持ちえる多角的な面を持ちながら、それを「違和感」ではなく、当たり前に同居し、共存しているものとして認識している。それこそが、御所の風土だと感じる。
だから、町家の”神々しい”写真たちは、御所での生活の中に存在する”もともとあったもの=神々しいもの”を撮ったものなので、「違和感」を感じさせるものとして展示や配置をしていないのではないだろうか。
御所で暮らす人にとっては、その写真は、生活の中にある”神々しい”ものを発見し、認識できたという点で新鮮な驚きがあったのではないかと思う。
そして、御所以外の人にとっては、この御所会場での作品展は、個別の「写真」の展示に留まらず、「御所という地」を現す作品展になっていたのではないかと思っている。


御所会場である町家の居間には、こたつが置いてあり、自由に入って話や六田氏の作品集を閲覧することが出来る。
作品たちに囲まれた空間の中で、連れだってこたつに入り、楽しそうに談笑する観者たちの様子を見て、なんと幸せな展示会場であろうかと感動した。
なお、御所会場のみ、土日曜日は、会場の外で、休憩場所の提供やお茶のふるまいが行われている。一見、静かな作品展とは似つかわしくない、そんな女性たちの存在は、そのおもてなし精神も含めて、御所の「風景」なのだと思う。


<写真展「写真家 六田知弘 宇宙のかけら―御所(ごせ) GOSE」>http://gose-muda.jp/

安全保障関連法案の強行採決への「恐怖」

本日、残念なことだが、安全保障関連法案が与党により強行採決され可決された。僕は明確に反対の立場であり、不安を抱きながら採決の行く末を見守っていたのだが、その際にそこはかとない「恐怖」を感じていた。それは、未来や将来への「恐怖」とともに、”安倍晋三”という異質な存在=「モンスター」への「恐怖」であった。


多数の国民や識者の声を軽やかにスルーする様は、”安倍晋三”という異質な存在への断絶感を感じさせるとともに、その存在への奇妙な現実感の無さをも感じさせた。それはつまり、反転して、”安倍晋三”から見た時に、デモや反対運動を行っている国民や識者は異質な存在であり、「モンスター」だと感じているのではないだろうか。だからこそ、お互いの存在にリアリティを感じられず、コミュニケートの深刻な断絶が穿たれているのではないか。同じ社会にあって、互いの存在は完全に乖離している。


その背景として、現在の日本社会に於いては、「システム」が高度化したことにより、別種のコミュニティに属する存在と直接的に対話したり接触しなくても生活出来てしまうからではないかと推測する。自分の属するコミュニティ以外の存在は、忘却し、直視しなくても生きていける。だから、他者に対して無関心になるし、すぐさま忘却しても問題ない。昨今の重大な問題事項が明るみになっても、社会的にすぐに忘れ去られてしまうのは、この背景が関係するのではないかと思っている。今や、対人や対コミュニティの折衝による社会形成より、「システム」の方が上位にあり、いい社会とは、いいシステムの構築と同義になっているのである。人が対峙しているのは、他者や他集団ではなく、システムなのである。


90年代後半から、いわゆる「セカイ系」作品と言われる作品群が隆盛したが、それは、「システム」の高度化(あるいは、「システム」は社会から離れて自立しているという共有認識)に起因したのではないかと考える。「セカイ系」的想像力とは、自分は「システム」とのみつきあえば、とりあえず生きていけるという感覚が前提にある。
そして、「社会」という中間層に対峙することなく社会がなんとなくうまく回ってきた結果、「セカイ系」的想像力の帰結として今回の安全保障関連法案の強行採決に至った気がする。
セカイ系」作品は「システム」を取り込む事で文学的な芳醇さ(創作作品の可能性の広がり)をもたらしはしたが、「システム」自体に不備があった場合の修繕方法や「システム」抜きでの生きる方法を弱体化させてしまった。そして、おそらく、もっと必要だったのは「批評」である。「システム」自体に言及し、解体し、再構築しうる「批評」の言葉がもっと必要であったはずである。「セカイ系」作品は、実は「批評」を必要としていたのではないか。「批評」による「システム」の解体や社会への接続が積極的に行われていたら、今回の断絶や乖離も、違った局面があったのではないかと空想してしまう。


そして、おそらく、今、必要なのは、”安倍晋三”という「モンスター」を人に戻す事である。「設定」をまとった”安倍晋三”という名前を持つ空虚な存在ではなく、1人の人間として認識すること。「システム」を介さずに「他者」としての”安倍晋三”を認識し、痛みを忘却しないこと。「システム」から記憶を奪還することではないだろうか。


異なるセカイに存在する僕と彼の人は、同時に、同じ社会に生きるひとりの人間であることを自覚し認識することが大切だと思う。

『ラブライブ!』視聴ガイド(『アラザル』9号原稿未載分)

文芸同人誌の『アラザル』9号に載せた拙稿、「”みんなで叶える物語”『ラブライブ!』について−拡張される「みんな」−」の”おまけ”として想定していたものの結局載せなかった原稿です。
本稿の”補完”であり、僕がオススメする『ラブライブ!』の視聴ガイドになっています。
せっかくなので、個人的に公開します。


−−−−−−−−ここから原稿−−−−−−−−−−

前回全体のラブライブ!

時間の無いあなたの為の『ラブライブ!』視聴ガイド


コンテンツが多岐にわたる『ラブライブ!』。
本稿を読んで少しだけ興味を持ったけど、その魅力を知るのに全部観るのなんて、時間的に流石に無理!と、思ったあなた。ご安心を。ラブライバーである僕が、短時間で『ラブライブ!』の本質を掴むことが出来る視聴順をご紹介。


1.<音楽>『ラブライブ! μ's Best Album Best Live! collection』(メディア:CD(Blu-ray Disc付))
購入&レンタル時は、必ず Blu-ray Disc 付きのほうを選ぶべし。同梱されている Blu-ray Disc には、1stシングルから5thシングルまでのPVが全部収録されていて、超お得! Blu-ray Disc に収録されているPVのアニメ映像を全編視聴して欲しいけど、時間の無いあなたは、PVの1曲目(『僕らのLIVE 君とのLIFE』)と2曲目(『Snow halation』)だけの視聴でOK。すべての原点になるPVなので、ここはきっちり押さえておくべし。


2.<映像>『ラブライブ! μ’s First LoveLive!』(メディア:Blu-ray、DVD)
1stライブの映像コンテンツ。PVのアニメ映像と同じダンスを再現しようと奮戦する担当声優たちを観て、なんとなく顔と性格を把握しておくと吉。全編を視聴して欲しいけど、時間の無いあなたは、ディスク1のトラック1、同トラック2(MC1)、同トラック21、そして、ディスク2のトラック4(メニューの表記では25)の視聴だけでもOK。


3.<TVアニメシリーズ>『ラブライブ!』(第1期) (メディア:TV放送・ネット配信、Blu-ray、DVD)
2013年1月から始まったTVアニメシリーズ第1期。全話を視聴して欲しいけど、時間の無いあなたは、第1話、第3話のBパート、第8話のBパート、最終13話のBパートの視聴だけでもOK。


4.<映像>『ラブライブ!μ’s 3rd Anniversary LoveLive! 』(メディア:Blu-ray、DVD)
3rdライブの映像コンテンツ。ライブの全体構成がTVアニメ第1期シリーズとシンクロし、虚構のキャラクターと実在の声優が交差しあう。全編を視聴して欲しいけど、時間の無いあなたは、ディスク1のトラック1、同トラック2、同トラック3、同トラック16、同トラック26、そして、ディスク2全編の視聴だけでもOK。


5.<TVアニメシリーズ>『ラブライブ!』(第2期) (メディア:TV放送・ネット配信、Blu-ray、DVD)
2014年4月から始まったTVアニメシリーズ第2期。全話を視聴して欲しいけど、時間の無いあなたは、第8話、第9話、第10話、第11話の視聴だけでもOK。


ここまで観たあなたには、『ラブライブ!』の魅力がきっと伝わっているはず。そして、おすすめした話数やトラック以外も、結局、全部観たくなっている……と、いいなぁ。興味が沸いたなら、4thライブのBDとか、他のCD、ニコ生・ネットラジオもありますよ。


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「百合」作品について考えるー「世界観」としての「百合」

ちまたにあふれる、いわゆる「百合」を題材にしていると謳っている男性向けコミック作品を読んで違和感を覚えることが多々ある。最近も、ある「百合」コミックアンソロジーを読んで違和感を覚えた。これらは、果たして「百合」作品なのだろうか?


そこで、この違和感の正体。「百合」とは何なのかを考えてみた。
結論を先に書く。
「百合」とは「世界観」である。
特に男性向けの「百合」作品では、その百合的な「関係性」よりも、それを通して浮かび上がってくる「世界観」こそが重要だと考える。


これは、いわゆる美少女ゲームシナリオライター元長柾木氏の言葉、「美少女ゲームとは本質的に、ジャンル名ではなく世界観だから。」(『美少女ゲームの臨界点』(2004波状言論刊・158頁)に大いに触発されての発想である。
そして、おそらくは男性向け「百合」作品は、その「美少女ゲーム」の延長線上にあるものである。


「百合」作品における「世界観」とは何か?
それは、そこで描かれる「百合」的な「関係」の社会的な是非やポジション、例えば、その関係性は社会(コミュニティ)的に許容されているのか、反社会(コミュニティ)的な事なのかなどの倫理観をきちんと考える事で浮かび上がってくる背景世界の事である。違和感を覚える作品は、それらに無自覚であると考える。「百合」的な関係性の向こうに世界が見えないのである。


作品例をあげれば、今、男性に人気が高い百合コミック/アニメ作品であるなもり氏による『ゆるゆり』(一迅社・2008-)では、女子中学生たちのゆるい「百合」関係が誰に咎められる事もなく日常の一風景としてある”やさしい世界”が描かれる。読者/視聴者が惹かれたのは、この百合的関係をも許容する”安心でやさしい世界”であると考える。
また、女性向けレーベルで出版しながら、男性にも人気が出た「百合」小説の草分け的作品である『マリア様がみてる』(集英社コバルト文庫・1998-)では、”リリアン女学園”という舞台と”スール(姉妹)”というシステムを用意する事で、「百合的関係」になる事の方が、むしろ正常であるという異質な世界観を構築した。これが、男性の支持を集めた大きな要因だったと考える。


女性向けのいわゆる「BL」作品では、逆に男性同士の「関係性」をどう描くかが重要視されると考える。「世界観」という概念自体が後退し、念頭におかれる事は少ないのではないだろうか。BL作品は、作者や読者は登場キャラクターに感情移入し、自身を投影させる事で作品として成立する。読む人間こそが最後のパーツとして存在する。だからこそ、カップリングや受け攻め論争が成り立つのである。
しかし、男性向けの「百合」作品は全く違う。
作者や読者は、あくまで「物語」の外側に立っている。読者は、吉川ちなつや福沢祐巳に自分を投影したりはしない。ただ、遠くからその作品世界を眺めるだけである。だからこそ、物語全体に横たわる「世界観」こそが重要なのである。
「百合」と「BL」は、単純に性別が置き換わったものではないのである。


以上はあくまで個人的な見解だが、だから僕は、「世界観」が見えないのにも関わらず、「百合」的な要素があるだけで「百合」作品というカテゴリーを名乗る作品に違和感を覚えるのである。

『劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語』ネタバレあり

下記の文章は、作中のネタバレを多分に含んでいます。
本編をご覧になってからお読み頂けると幸いです。



























『劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語』−”引き裂かれる”物語


『劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語』は、TVシリーズあるいは、TVシリーズの総集編たる劇場版前・後編の続編であるが、それに留まらない別の何か、1本の「映画」として大変素晴らしい作品になっている。


TVシリーズでは、制作陣の組み合わせ、キャラクター原案の蒼樹うめ、シリーズ構成・脚本の虚淵玄、音楽の梶浦由記、アニメーション制作のシャフト、異空間設計の劇団イヌカレー、そして、監督の新房昭之シリーズディレクターの宮本幸裕という異色の組み合わせそのものが目新しく、この作品の独特なカラーを創り上げる事に成功した。
劇場版では、TVシリーズと同じ布陣ながら、組み合わせの妙に胡座をかく事なく、各スタッフがその分野の方向性をとことんまで突き詰めた事で、どれひとつとってもハイクオリティな絶妙なバランスで成り立つ奇跡的な出来映えに仕上がっている。


その中でも、「物語」について注目してみたい。


まず、TVシリーズでは、「システム」との闘いが主題であったと思う。
「システム」とは魔法少女=魔女を生み出す仕組みであり、自動的に主人公たちにのしかかってくる重みである。だから、最終的に闘うべきは「謎の組織(大きな物語)」でもなく「特定の敵(キャラクター)」でもなく、「自己の内面(他者との恐怖)」でもなく、「同類たち(サヴァイヴ)」でもなく、世界の理そのものであった。なお、この変遷は「物語」での「敵」の在り方の歴史を綺麗にトレースしており、それだけでも本作の価値がうかがい知れる。


そして、TVシリーズにおいては、物語は最終的に「システム」を上書きする事で決着する。しかし、結局、「システム」による支配という構造は変わっておらず、「キャラクター」が「システム」という概念に変化した以上、本来のその「キャラクター」の欲望や価値判断がどうなるのかまでは、うやむやのままであった。



さて、新編である。


本作の舞台は、作中キャラクターであるほむらの「願望」の具現化した偽りの楽園として用意されている。その願望は、主人公であるまどかに最も顕著に現れているとされているが、これらの「願望」とは、視聴者たる私たちの「願望」でもあり、だから、私たちはほむらに感情移入し、物語の推移を見守ることになる。


作中に於いて、重要なファクターになっているのが「違和感」である。
いるはずのないキャラクターの存在や設定の齟齬、あるいは、主人公たるまどかがいつもニコニコしている(!)など様々な違和感が物語内に配置されており、それらを違和感として認識できる唯一のキャラクターであるほむらが感じる違和感が、そのまま視聴者の違和感として認識でき、ほむらと視聴者の結びつきはより強固になっていく。
それらの違和感が収斂し、ほむら(と視聴者)という個人の判断や懐疑が偽りの楽園の崩壊へとつながっていく。


そうして、違和感の正体を発見し、解消したカタルシスに浸る視聴者に、物語として劇的な変化が訪れる。
それは、作中のシーンで、まどかとほむらが再会した瞬間に訪れる。
「私が裂けちゃう」と叫び、まどかの存在が2つに引き裂かれるのである。
しかし、ここで真に引き裂かれているのは、「物語」であり「視聴者」のほうである。


今まで、ゆるぎない共存関係を続けていた「ほむら」と「視聴者」が唐突に分離される。ほむらの言動が、視聴者の願望を裏切るようになるからである。
これ以降、ほむらは視聴者の感情移入を徹底的に拒む存在として描かれる。
ほむらの「願望」であった偽りの楽園の崩壊と同時に、視聴者が望んでいた(同化できるキャラクターとの)心地よい作品世界も崩壊してしまう。


(視聴者にとって)別種の存在となったほむらは、個人としての欲望を噴出させる。それは、もはや視聴者のものではなく、ほむらという「他者」としての欲望である。その、ほむらという「個人の欲望」は、ついには「システム」を覆す。
「システム」を「システム」によって上書きするのではなく、「個人の欲望」が「システム」と拮抗しうるものとして描かれているのは重要である(だから、キュゥべえの「君は何を書きかえたんだい?」に対する応えが無い)。
この時点で、「システム」の内容を巡る攻防から、”「システム」という存在”への懐疑へと闘いはシフトしている。決して「システム」に回収されることのない「個人の欲望」を持って、「システム(秩序)」に抵抗し、叛逆し続ける存在としてほむらは闘っているのである。



私たちが今、生きているこの社会は、高度にシステム化され、もはやシステム無しには回らない社会である。そんな社会に於いて「個人の欲望」は、あってはならないものなのだろうか。秩序が生きる環境を整えるなら、欲望は生きる動機になるものではなかったのだろうか。
私たちは、システム的秩序の必要性を理解しつつも、個人の欲望を捨てきれないでいる。「秩序」と「欲望」に引き裂かれている。
そんな引き裂かれた二重性を持って、私たちは今を生きている。

『あまちゃん』−なぜ、潮騒のメモリーに感動したのか。「変わらない」物語について。

不覚にも『あまちゃん』最終週・第153回で鈴鹿ひろ美が歌唱した「潮騒のメモリー」に感動してしまった。何度も何度も繰り返し観てしまう。
なぜ、ここまで感動したのか。
それは、変更された歌詞「3代前からマーメイド」が大きなファクターになっているように思う。


先んじて告白しておく。
このドラマは、宮藤官九郎が脚本を担当するという事で注目はしていたのだが、本格的に観始めたのが「震災編」からであり、僕は謂わば『あまちゃん』の”あまちゃん”である。なので、短い駄文とは言え、見当違いの事を書き連ねる事になるかもしれない。何卒、ご容赦頂きたい。それにしても、こんなに良く出来た作品であれば、最初から観ておくんだったと後悔することしきりである。


さて、変更された歌詞についての話である。
まず、このドラマは、「変わらない」事を肯定し、希求する物語であると考える。
主人公のアキは「おらは変わらねぇ」と言い、その母である春子は80年代の幻影を伴い、祖母の夏は震災があろうとも変わらず海に潜り続ける。
対して、親友のユイと女優の鈴鹿ひろ美は変わり、移ろう存在として描かれる。
閉塞感と行き詰まり感を伴いながら、しかし、「地元」北三陸は、変わらないでほしい理想郷として描かれている。だからこそ、震災後、「元に戻そう」というストーリーが駆動するのである。「変わらない」事への羨望が、”失って気づくもの”として立ち上がってくる。
そして、作中にて最も「変わらない」を象徴しているのは、1986年から歌い継がれてきたという設定の「潮騒のメモリー」である。曲調のアレンジや歌い手を変えながらも、歌詞はそのままに、「不変の象徴」として存在し続ける。


ところで、作中に於いて、”世界の広がり”は、場所の違いとして平面的に認識されている。主たるものは「地元」と「東京」の対比である。
80年代であろうとも現代であろうとも、それは、場所の違いとしてシームレスに語られる。
「変わらない」天野家の3人(アキ・春子・夏)も、同じ平面上に立っている。だから、東京編を経て、この3人が地元に揃うと妙な閉塞感を伴ってくるのである。
最終週近くになって、東京編での主要人物が、地元・北三陸の町内に集結し始めると、世界はどんどん狭くなっていく。閉塞感が極限にまで高まってくる。


そして、このタイミングで、鈴鹿ひろ美の「潮騒のメモリー」が歌唱される。
それは、「不変の象徴」たる歌詞を変更したものである。
それは「変わらない」「潮騒のメモリー」を地元・北三陸を、そして、天野家3人の立ち位置を「変えた」のである。
それまでは、同じ平面上に立っていたアキ・春子・夏の3人を「3代前から」という歌詞で関係性を再発見させることにより、「場所」だけだった世界に「世代の積み重ね」という時間的認識を導入するのである。
「世界」の認識のしかたを「潮騒のメモリー」を聴かせることによって改変し、発見させる。
それまで、閉塞感を感じていた「場所(横軸)」だけだった世界認識を3世代のつながりという「時の流れ(縦軸)」という突破口を導入することでダイナミックな変化を起こし、心を揺さぶる。だから、感動したのである。


「変わらない」事は停滞と同義ではない。
「変わらない」でも、世代を重ね継承していく事で、人の営みをつないでいく事は可能である。
過去・現在・未来を見据え、その上で今を生きていく。
そんなテーマが内包されている作品なのではないかと感じた。


それらを踏まえた上で、『あまちゃん』とは、「変わらないこと」=「甘ちゃん」のままでいることを肯定する物語であったのではないだろうか。

13年7月スタート新アニメ録画メモリスト

あくまで、自分用メモです。
間違い・抜けはあるかも。


奈良県、地デジ、BS・AT-X視聴環境あり、3番組まで同時録画可能環境を想定。



*週区分
[1]7/1-7
[2]7/8-14
[3]7/15-21
[4]7/22-28
[5]7/29-




<月曜日>

[2]『魔界王子 devils and realist』2013-07-08 (月) 20:30 AT-X


[1]『リコーダーとランドセル ミ☆』2013-07-01 (月) 22:25 AT-X


[3]『超次元ゲイム ネプテューヌ THE ANIMATION』2013-07-15 (月) 24:30 BS11デジタル


終-7/1[1]『翠星のガルガンティア』2013-04-08 (月) 25:58 読売テレビ
注目。予備あり


終-7/1[1]『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』2013-04-08 (月) 26:20 MBS毎日放送
予備あり


[2]『八犬伝―東方八犬異聞―(第2期)』2013-07-08 (月) 26:25 MBS毎日放送
予備あり。


終-7/1[1]『フォトカノ』2013-04-08 (月) 26:55 MBS毎日放送
予備あり。


[2]『げんしけん二代目』2013-07-08 (月) 26:55 MBS毎日放送


[2]『ローゼンメイデン(新)』2013-07-08 (月) 27:25 MBS毎日放送
予備あり。


継続『HUNTER×HUNTER』27時ごろ 読売テレビ




<火曜日>

[1]『BROTHERS CONFLICT』2013-07-02 (火) 19:30 AT-X
予備あり。


[2]『神さまのいない日曜日』2013-07-09 (火) 20:30 AT-X
予備あり


終-7/2[1]『あいうら』2013-04-16 (火) 21:25 AT-X


[1]『たまゆら〜もあぐれっしぶ〜』2013-07-03 (水) 21:30 AT-X


終-7/9[2]・予備2・未使用『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。(2期)』2013-04-16 (火) 22:30 AT-X


[3]予備2『サーバント×サービス』2013-07-16 (火) 22:30 AT-X


[2]『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』2013-07-09 (火) 23:00 AT-X


終-7/9[2]『アラタカンガタリ革神語〜』2013-4-16(火) 23:30 AT-X


[3]予備『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』2013-07-16 (火) 23:30 AT-X


終-7/2[1]『翠星のガルガンティア』2013-04-09 (火) 24:00 BS11デジタル


[2]『有頂天家族』2013-07-09 (火) 24:00 BS11デジタル
注目。


継続『進撃の巨人』2013-04-09 (火) 24:30 BS11デジタル


終-7/2[1]『刀語』2013-04- (火) フジテレビ
ノイタミナ枠。1時間。


[3]『銀の匙 Silver Spoon』2013-07-16 (火) 25:58 関西テレビ
ノイタミナ




<水曜日>

継続『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』2013-04-10 (水) 20:30 AT-X


[2]予備2『Free!』2013-07-10 (水) 22:00 AT-X


継続『超速変形ジャイロゼッター』 2012-10-24 (水) 23:00 AT-X


終-7/17[3]『絶対防衛レヴィアタン』2013-04-24 (水) 23:30 AT-X


[2]『てーきゅう(第2期)』2013-07-10 (水) 23:55 AT-X


[1]予備『BROTHERS CONFLICT』2013-07-03 (水) 24:00 BS11デジタル


[3]予備『ロウきゅーぶ!SS』2013-07-17 (水) 24:30 BS11デジタル


終-7/3[1]『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。(2期)』2013-04-10 (水) 26:13 ABCテレビ
予備1・2あり


[2]『幻影ヲ駆ケル太陽』2013-07-10 (水) 26:13 ABCテレビ
注目。予備あり。


[1]『Free!』2013-07-03 (水) 26:43 ABCテレビ
注目。予備2つあり。




<木曜日>

終-7/11[2]『ハヤテのごとく! Cuties』2013-04-18 (木) 22:00 AT-X


[3]『神のみぞ知るセカイ 女神篇』2013-07-18 (木) 22:00 AT-X


終-7/4[1]『はたらく魔王さま!』2013-04-11 (木) 22:30 AT-X
1週遅れ


継続『DD北斗の拳』2013-04-18 (木) 23:00 AT-X


[2]予備『きんいろモザイク』2013-07-11 (木) 24:00 BS11デジタル


[2]予備『ハイスクールD×D NEW 月光校庭のエクスカリバー』2013-07-11 (木) 24:30 BS11デジタル


[1]『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 The Animation』2013-07-04 (木) 25:35 MBS毎日放送
予備あり


[1]『恋愛ラボ』2013-07-04 (木) 26:05 MBS毎日放送
予備2つあり。


終-7/4[1]『はたらく魔王さま!』2013-04-04 (木) 26:30 BS日テレ
予備あり


[1]『戦姫絶唱シンフォギアG』2013-07-04 (木) 26:35 MBS毎日放送
予備あり。


[1]『犬とハサミは使いよう』2013-07-04 (木) 27:00 BS日テレ
予備あり


[1]『サーバント×サービス』2013-07-04 (木) 27:08 ABCテレビ
予備2つあり。




<金曜日>

[2]別途『きんいろモザイク』2013-07-12 (金) 17:30 AT-X
コメンタリ−付加版。別途録画要。


[1]予備『犬とハサミは使いよう』2013-07-05 (金) 21:30 AT-X


[1]『ロウきゅーぶ!SS』2013-07-05 (金) 22:30 AT-X
予備あり。


終-7/5[1]予備『よんでますよ、アザゼルさん。Z』2013-04-12 (金) 23:00 BS11デジタル


[2]予備『神さまのいない日曜日』2013-07-12 (金) 23:00 BS11デジタル
こっちで残す?


[2]予備『ファンタジスタドール』2013-07-12 (金) 23:00 AT-X


終-7/5[1]予備『波打際のむろみさん』2013-04-12 (金) 23:15 BS11デジタル


継続『とある科学の超電磁砲S』2013-04-12 (金) 23:30 AT-X
チェック。予備1・2あり


[1]予備『戦姫絶唱シンフォギアG』2013-07-05 (金) 23:30 BS11デジタル


継続・予備2『とある科学の超電磁砲S』2013-04-19 (金) 24:30 BS11デジタル
1週遅れ


[2]『ブラッドラッド』2013-07-12 (金) 27:00 BS11デジタル




<土曜日>

[2]『イナズマイレブンGO ギャラクシー』2013-05-11 (土) 6:30 BS Japan


継続『アイカツ!』 2012-10-13 (土) 13:30 BS Japan


[2]予備1『恋愛ラボ』2013-07-13 (土) 20:00 AT-X


[1]『きんいろモザイク』2013-07-06 (土) 20:30 AT-X
予備あり。別途、翌週の金曜日にコメンタリー付加版あり


終-7/6[1]『惡の華』2013-4-6(土)22:30 BSアニマックス(無料放送)
注目


[2]予備『八犬伝―東方八犬異聞―(第2期)』2013-07-13 (土) 23:00 BS11デジタル


[2]予備『幻影ヲ駆ケル太陽』2013-07-13 (土) 23:30 BS11デジタル


継続『キングダム(第2シリーズ)』2013-06-08 (土) 23:45 NHK BSプレミアム


終-7/6[1]・予備1『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。(2期)』2013-04-13 (土) 24:00 BS11デジタル


[1]予備『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 The Animation』2013-07-06 (土) 24:00 BS-TBS


[2]予備『<物語>シリーズ セカンドシーズン』2013-07-13 (土) 24:00 BS11デジタル


終-7/6[1]・予備『DEVIL SURVIVOR 2 the ANIMATION』2013-04-13 (土) 24:30 BS-TBS


[2]予備1『サーバント×サービス』2013-07-13 (土) 24:30 BS11デジタル


[2]予備2『恋愛ラボ』2013-07-13 (土) 24:30 BS-TBS


終-7/6[1]・予備『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』2013-04-13 (土) 25:00 BS-TBS


[3]『ステラ女学院高等科C3部』2013-07-13 (土) 25:00 BS-TBS


終-7/6[1]・予備『フォトカノ』2013-04-13 (土) 25:30 BS-TBS


[2]予備『ローゼンメイデン(新)』2013-07-13 (土) 25:30 BS-TBS


継続『進撃の巨人』2013-04-06 (土) 25:58 MBS毎日放送
予備あり


[1]『<物語>シリーズ セカンドシーズン』2013-07-06 (土) 26:28 MBS毎日放送
注目。予備あり。


継続・予備1『とある科学の超電磁砲S』2013-04-13 (土) 26:58 MBS毎日放送
こちらで保存?


[2]『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』2013-07-13 (土) 27:00 BS11デジタル
予備あり。


[1]『ファンタジスタドール』2013-07-06 (土) 27:28 MBS毎日放送
注目。予備2つあり。




<日曜日>

*日朝枠
聖闘士星矢Ω→戦隊→ライダー→ドキプリ


継続『宇宙戦艦ヤマト2199』2013-04-07 (日) 17:00 MBS毎日放送


継続『機動戦士ガンダムSEED DESTINY(HDリマスター)』2013-04-07 (日) 19:30 BS11デジタル


継続『ムシブギョー』2013-04-14 (日) 20:00 AT-X


[1]『ハイスクールD×D NEW 月光校庭のエクスカリバー』2013-07-07 (日) 20:30 AT-X
予備あり。


継続『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』2013-04-07 (日) 24:00 BS日テレ
予備あり


[1]予備1『Free!』2013-07-07 (日) 24:00 BS11デジタル


[1]予備『ファンタジスタドール』2013-07-07 (日) 24:30 BS11デジタル


[2]『ふたりはミルキィホームズ』2013-07-14 (日) 26:00 BS日テレ






<ネットで対応>TV視聴環境無し

[1]『戦勇。(第2期)』2013-07-02 (火)
ニコ動 
7/2- 毎週火曜日 深夜1時40分更新


[2]『君のいる町』2013-07-14 (日)
ニコ動チャンネル 7月14日(日)23:30より配信開始
バンダイチャンネル 7/16- 毎週火曜 正午更新。見放題サービスで配信


[2]『義風堂々!! 兼続と慶次』2013-07-08 (月)
バンダイチャンネル
7/8- 毎週月曜 正午更新。見放題サービスで配信


[3]『帰宅部活動記録』 2013-07-18 (木)
バンダイチャンネル
7/18-第1話・第2話同時開始
第3話は7/31より。以降毎週水曜 0時更新






<視聴環境なし>

ガッチャマン クラウズ』2013-07-12 (金) 25:58 日本テレビ
注目
日テレオンデマンドの有料配信にてフォロー可能だが、要検討。


『マジでオタクなイングリッシュ!りぼんちゃん the TV』
2013-07-05 (金) 25:53 テレビ東京